プロポーズは突然に。
「ええっ!?ロッソ・ピウマの商品説明会!?」
「ちょっと…声大きいよ」
いいものを求め、優雅に店内を回る女性客達の視線が“ロッソ・ピウマ”という一言で一気にこちらに集まる。
場所はRoadwayの一つ下の階にある化粧品売り場。
声の主である紺野 咲ちゃんは、入社四年目の美容部員である。
職場は違えど同期である彼女とは中々気が合い、よく愚痴や悩みを共有し合う仲だ。
美容部員の彼女の美意識はとても高く、週に一度うちの店にトリートメントをしにやって来る。
それ故か、毛先をクルンと内巻きにした肩まで伸びた髪は今日も傷みを知らない。
咲ちゃんは私の指摘を受け、一つ咳払いをすると改めて小声で私に問う。
「どういうこと?うちにはそんなFax来てないけど」
「え?そうなの?」
「化粧品ブランドの商品説明会なら、そっちじゃなくてうちに案内来るはずなのに…間違えたとか?」
「それはないんじゃないかな。サロン専用商品だってオーナー言ってたし美容院が対象なのかも」
「サロン専用…なるほど…」