プロポーズは突然に。
「アイライナーとアイシャドー、ビューラーにマスカラ…これくらいでいいかな」
「お買い上げありがとうございまーす!どうする?メイクしよっか?」
「ううん、昼休憩終わっちゃうから自分でするよ。ありがとう」
分かった、と頷いた咲ちゃんは、買った化粧品を丁寧に紙袋に入れていく。
「いつも思ってたけど桃華の口紅すっごく良い色だよねぇ。綺麗な発色で存在感があるっていうか…それどこの?」
愛用の口紅を褒められつい口元が緩んだのを感じた。
さすが咲ちゃん、目の付け所が違う。
普段良いものを扱ってるから、目が肥えてるのかな。
「これ?これね、実は……」
「紺野さん、ちょっといい?あちらのお客様お願いしたいんだけど」
「はい、すぐ行きます。じゃあね、桃華。ロッソ・ピウマの話し、また聞かせて」
「うん、咲ちゃんも頑張ってね」
慌ただしくお客様の元に駆けていく咲ちゃんに小さく手を振り、お店を後にした。