プロポーズは突然に。
苦しみと幸せの狭間
食後、彼は少しだけ仕事をするから、と言って持ってきていたらしい仕事に取りかかった。
だから邪魔しても悪いし、それにせっかくだし…と思い、今度は部屋の露天風呂を堪能することにした。
石造りのそれに入りながら見える夜景は凄く綺麗で、オレンジ色の光がゆらゆらと煌き、まるで宝石箱のよう。
正に絶景とも言える景色を眺めながら、
「…、くるし…っ」
気付いたら胸の辺りを押さえていた。
初めての温泉旅行。
最高な部屋。
驚くほど贅沢な料理。
そばで笑ってくれる彼。
自然と笑顔になれる自分。
楽しくて、嬉しくて……………それなのに苦しくて。
…そんな思いを、目の前に広がる宝石箱の中に葬るように消し去ったんだ。
──気付きたくない、絶対に気付かせないで。
…と、願うように、祈るように…胸に抱えながら。