プロポーズは突然に。
そして時は夕刻を迎え、私はオーナーと共に都内のオフィス街の中で群を抜いた大きさを誇る建物、ロッソ・ピウマに足を運んだのだが…
「ねぇ桃ちゃん…」
「はい、オーナー…」
「これは…どういうことだと思う?」
「さぁ…」
そこには私達以外は誰もおらず、首を傾げてしまう。
案内してくれた女性は、暫くお待ちください、と部屋を出たきり戻ってこないし…
ロッソ・ピウマの商品説明会なんて入場に規制がかかるほど人で溢れ返ると思っていたのに…
困惑した様子のオーナーは念のため、と持ってきていたFaxの案内を確認する。
「時間も日にちも確かに合ってる。こんな機会滅多にないのに…他の企業は一体どうしたんだろうね?」
「私にも分からないです」
理解不能なこの状況に為す術なくオーナーと二人で立ち尽くす。
そのとき、通された部屋のドアを誰かがノックした。