プロポーズは突然に。
───その日もいつもと変わらない朝だった。
目が覚めたら、いつも通り彼は隣で寝息を立てていて、私は起こさないようにソッとベッドから抜け出して。
いつも通りに起き抜けのコーヒーを飲み、着替えて、顔を洗って、パウダールームでメイクを施した。
そして、いつも通り最後に口紅を塗ったとき──
「………っ、…」
いつも通り胸の苦しさを感じて、いつも通り声にならない声を漏らした。
何年経っても苦しくて……
だけど唯一の繋がりを失いたくなくて。
鏡の中に映る私の唇はいつも通りローズに色付いていた。