プロポーズは突然に。





どうして最後まで“いらない”を貫けなかったのかな。



父との唯一の繋がりは、今でも私の痛みとして残ってる。



あんな言葉に嬉しくなって受け取ったりしなければ…



毎日苦しい思いしなくて済んだかもしれないのに。



あのときの私はそんな簡単なことにも気付けなかった。



“人”がいなくなったって“物”だけは永遠に残るんだってこと。



そして、“人”がいなくなった先に残るものは、情けないほどの依存心と執着心だってこと。



“父”の代わりに“物”に執着して、口紅を塗る度に自分は愛されていたんだと必死に言い聞かせて。



私はそういうおかしい人間なんだ。

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