プロポーズは突然に。



彼と出逢い、反発心から口紅を塗るのを止めたあの期間。


あの時は鏡を見ても全然苦しくならなくて…だけど、その苦しさがないことが苦しくて。


結局、この痛みからは一生解放されないのだと知った。






「父から何を渡されても“そんなのいらない”って言い続けたのには理由があって…」

「…うん、」

「本当は……………、」





そこまで言って言葉に詰まった。


他人である彼にこんなことを言ってどうなるのか、


自分の痛みや苦しみを誰かと共有したって仕方ないのに私は何をベラベラと余計なことばかり喋っているのか。


…なんて急に冷静になり、そんなことを考えてしまったから。


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