プロポーズは突然に。



それがおかしいと思い始めたのは幼稚園に通っていた頃。


よくある、お父さんとお母さんの絵を描いてみましょう、とかいうので周りの友達と何かが違うことに気が付いた。


みんながスラスラとクレヨンを動かす中、私の手はずっと止まったまま。


そんな私を見た先生に、桃ちゃんどうしたのかな?なんて聞かれて、




『あのね、ももかのお父さんとお母さんの顔ってどんなのだっけ?』




…そう聞き返したんだ。


それほど、私の日常の中に両親はいなかったから。





幼稚園のバスで帰宅してもやっぱり誰もいなくて。


ラップに包まれたおにぎりがテーブルに置かれてて。


小さな部屋の隅っこに座って一人でそれを頬張る。


それが私の“いつも通り”の生活だった。




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