プロポーズは突然に。




珍しく母が一人で帰ってきたときは、嬉しくて、甘えたくて、駆け寄ったこともあった。


だけど、その度に冷たい瞳を向けられ、




『…鬱陶しい』

『………え?』

『いい?あたしに子供はいないの』

『…』

『だから甘えてこないで』




そんな言葉を吐かれ続けた。


私は……甘えることすら許されなかった。




“お母さんと手を繋ぎたい。抱っこしてほしい。一緒に眠りたい───ううん、何もしなくていいから…ずっとここにいてほしい“




こんな思いも、音にはできないまま。




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