プロポーズは突然に。






小学校高学年になると殆どのことを理解した。


いや、理解させられた、の方が正しいのかもしれない。




その頃、父はカリスマ美容師としてよくテレビに出ていて結構有名人だった。


私は、ブラウン管越しでも父に会えるのが嬉しくて嬉しくて。


瞬きするのも勿体無く感じて、テレビの画面をペタペタと触りながら父を感じていた。





だけど、父が有名人になってしまったことが私を苦しめることになる。


事の始まりは、1冊の週刊誌だった。


その見出しに大きく書かれていた言葉に、私は初めて自分が父にとってどんな存在なのかを知ったんだ。





“話題のカリスマ美容師には愛人との間に生まれた隠し子がいた!”






──────信じたくなかった。


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