プロポーズは突然に。
父がイタリアで心機一転、メイクアップアーティストとして活躍し始めた頃、私は中学生になっていた。
この頃には、もうテーブルにコンビニのおにぎりや菓子パンはなくて…
『これで一週間は生活できるでしょ』
朝方、酔い潰れて帰ってきた母が、そんな言葉と共に私に一万円札を投げつけるのがこの時の“いつも通り”になっていた。
中学生の私に、一週間分の食費として一万円は充分すぎるほどだった。
だけど……そうじゃない。
私はお金なんかよりも、お母さんの握ってくれたおにぎりの方が。
せめて、お母さんが私の為にって選んで買ってきてくれたご飯の方が。
よっぽど……嬉しいんだよ。
そんな私の思いも知らないまま、母は風俗の仕事を続けていた。
多感なこの時期には、その仕事がどんなものなのか理解できて…結構キツかった。
母は得た収入でホストクラブに通いつめ、男に貢ぎ、相変わらず知らない男を家に連れ込んだ。
そして、夜中に聞こえてくる異様な声に目を覚ますと、相変わらず涙を流しながら男に抱かれていて…私はそんな光景をいつもボーッと眺めていた。
母は愛に貪欲で…………男に狂ってたんだ。