プロポーズは突然に。





翌日、Roadwayには問い合わせが殺到し、私と先輩美容師である仲根 優子さんがその対応に追われることとなった。


ロッソ・ピウマが化粧品店や百貨店ではなく美容院と契約を結んだことは、それほどまでに美容業界に衝撃を与える出来事になったのだ。



「朝から鬼電半端ない…桃ちゃん、そっちはどう?」

「こっちは今、落ち着いたところです」

「私、もう電話係やめたいんだけど…」

「ダメですよ。オーナーに任されたんですから」

「美容師が電話番って…いちいち電話してくる野郎共クソ食らえってんだよ、ボケッ!」



腰まであるロングヘアを一つに纏めた彼女は綺麗な黒髪を揺らしながら椅子にドカッと豪快に腰掛ける。




「優子さん…また言葉が悪くなってますよ」

「悪くもなるわっ!」



優子さんは“美人すぎる美容師”としてよくメディア出演をするRoadwayの看板美容師だ。


見た目は清楚で美しい女性だが、一度口を開けば口の悪さと男勝りな性格が顔を出す。


誰もがそのギャップに驚かされるものの、そのキャラがウケて彼女を指名するお客様が後を絶たない。

私もまた、そんな優子さんが大好きでとても慕っている。




< 31 / 370 >

この作品をシェア

pagetop