プロポーズは突然に。





結局、今日は一度もお客様を担当することなく電話係だけで閉店時間を迎えた。


あー……一日中電話対応してた所為で喉カラッカラ。

明日休みだし飲みに行きたい…

居酒屋…の気分ではないな。

家飲みだと余計なこと考えちゃいそうだし…

今は何も考えず落ち着いてゆっくり飲めるとこがいい。



「はぁ…」



お店の片付けをしながら、ふと漏れたため息。


一昨日の今頃までは平和な日常だったのに。

あのプロポーズの後から、私の周りは何だか急激に世界が変わったような気がするんだ。



―――プルルル、プルルル……



「はぁ…」



そして、再び漏れたため息。



今日だけで一体何度聞いたのか分からないその音にはもううんざりだった。

閉店後まで電話対応しないといけないのか…

憂鬱になるものの今日最後の仕事だと割り切り電話に手を伸ばす。



「お電話ありがとうございます。Roadway、香坂です」

『俺だ』

「はい?」

『だから俺だ』



…………オレオレ詐欺?



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