プロポーズは突然に。
そこで音は途切れた。
突然後ろから降ってきた大きな手が、私の耳を包み込むように塞いでくれたから。
そこで漸く体が言うことを聞き、動けるようになった勢いのまま首だけで後ろに振り向いた。
音のない世界で私の瞳に映ったのは………彼の姿だった。
その状況を理解できず、ポカンとだらしなく口を開ける私に、彼は、ふっ、と笑う。
すぐに私の耳から手を離した彼は、今度は私の手を引いて踵を返すとその場から私を連れ去るように歩き出した。
後ろの方で、ユキという女が何かを言っていたような気がするけれど…
「何も聞くな」
彼がそう言ったから…私は静かに頷いた。
───繋いだ手は、やっぱり温かくて…どこか懐かしかった。