プロポーズは突然に。
…ってそんなわけはなくて。
『結婚相手の声を忘れたのか?』
オレオレ詐欺よりもタチが悪いかもしれない。
電話だと少し声が違うように感じるけど、この有無を言わさぬような話し方は間違いなくあの人だ。
「赤羽さん…ですか?」
『あぁ。仕事終わったか?』
「いえ、片付けがあるのでもう少しかかります」
『そうか。じゃあ終わったらこの前のバーに来い』
彼の言葉に私は何も答えぬまま首を傾げる。
この前のバーって……何処?
私、あの人とバーなんて行ったことないんだけど。
『一昨日の夜、男とバーに行っただろ?そこのことだ』
「えっ!?どうしてそれを…」
『話は後だ。とにかく待ってるから』
「あっ、ちょっと、赤羽さんっ…」
半ば強引とも思えるやりとりは、彼が一方的に電話を切ったことで終息した。
でも…本当の難関はここからだ。