プロポーズは突然に。
暫く天井を見ていた母は、そのままゆっくりと目を閉じ、寝息を立てて眠りに就いた。
その時、母の容態は落ち着いていたし、父と律が側に付いていたし…
そのまま病室にいても気が滅入ってしまいそうだったから、気晴らしに外にでも行ってみようと思った。
だけど、あの日は秋風が強くて肌寒くて…
あんなに寒い日に、どうして外へ出ようと思ったのか自分でもよく分からない。
ただ、何かに引き寄せられるように……気付くと病院の屋上に足を運んでいた。
長いこと母が入院している病院なのに、屋上に行ったのはこの日が初めてだった。
『…寒、』
それが、屋上の扉を開けたときの俺の第一声。
あまりの寒さにそのまま扉を閉めようと思ったけど、屋上内に設置されている自販機が目に入って…
取り敢えず、何か温かい飲み物を買おうとそのまま屋上に足を踏み入れた。
そして飲み物を買い、近くのベンチに腰を掛けながらそれに口を付け…喉を伝わる温かさにホッとした。