プロポーズは突然に。
屋上内は寒かったけど閑散としていて、心を落ち着かせるには最適な場所だった。
せっかくの静かな空間。現実を忘れられる時間。
なるべく余計なことを考えないように、と、鞄に入れていた雑誌を読もうと手に取った。
それは海外の美容系雑誌。
それを捲る度に将来自分が背負うであろう一流ブランドの商品がここぞとばかりに取り上げられていて…
読みながら少しだけ嫌気がさした。
たしかに何不自由のない暮らしを与えられてきた。
だけど、実際の俺は空っぽで、未来に夢も希望もなかったんだ。
地位、名誉、権力、財産。こんな所詮は飾りのようなものに縛られている自分。
そんな飾りにつられて自分の周りに集まるつまらない女達。
つまらない日常。生まれた瞬間から勝手に決まっている自分の未来。
子供の頃からやりたくもない勉強をさせられ、
自分が興味を持ったスポーツは何一つさせてもらえなかった。
きっと自分の未来は、これからもこうやって勝手に決まっていくんだろう。
特にやりたくもない仕事をして、全く好きでもない女と結婚させられて。
そんなつまらない人生を送るのだろう。
そんな風に思っていた。