プロポーズは突然に。




「割り切るって…そんなことまでして結婚しないといけない理由でもあるんですか?」

「…うちのしきたりみたいなものだ。28歳になっても独身の場合、親が決めた相手と結婚させられる」

「断ることはできないんですか?」

「しきたりを守らなければ即勘当。そうなれば副社長のポストも降ろされる」

「…」



何も言えない、言えるわけもない。

私とは住む世界が違いすぎて…

何を言えばいいのかすら分からない。



「誕生日までもう時間がない。もしその日までに結婚相手が見つからなかった場合、父が決めた相手とすぐに入籍することになる」

「そうなんですか…」



だからあんなに突然プロポーズを…

理由は分かったけど納得はできない。

私には彼と結婚する理由が一つもないのだから。



「その相手っていうのが資産家の娘で何度か食事したんだけど…典型的な面倒くさい女だった。生粋のお嬢様で世間知らずな上に常に目を潤ませてるような女」

「女性らしくて可愛いと思いますけど」



二杯目にドライマティーニを飲んだあと、ひたすらウォッカとテキーラをストレートで飲んでいる私。

そんな私なんかにはない可愛らしさ、奥ゆかしさがその女性にはある。

結婚相手にするならそういう女性の方が絶対にいいはずだから…

やっぱり私には彼と結婚する理由がない。




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