プロポーズは突然に。





あの日、この人もここに………?




「それでコンビニまで尾行した。すぐに声を掛けても良かったんだけど様子を見ておこうと思って」

「様子を…」

「帰り道でもし泣いたりしたら止めようと思った。恋愛絡みでいちいち泣く女は大嫌いだから」

「…そんなことで泣いたりしません」

「そうだな。おまえは背筋を伸ばし前を向いて歩いてた。失恋の後だっていうのに悲しい顔一つせずにな」



自分の可愛いげのなさをここまで憎んだことが嘗てあっただろうか。


もしも目の前にあるグラスに入っているのがカシスオレンジだったら、


もしもあの時、宏樹に泣いてすがり付いていたら、


もしもフラれた後、涙を流せるくらいの可愛さが私にあったのなら………



「だから俺はおまえと結婚する。もう決めたんだ」




…こんな面倒なことに巻き込まれなかったのに。




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