プロポーズは突然に。




「結婚はしません。でも…あなたにお聞きしたいことがあります」

「なんだ?」

「どこからどこまでが…偶然なんですか?」



プロポーズされた次の日に、ロッソ・ピウマがRoadwayと契約を結ぶなんて偶然にしてはできすぎている。

考えたくはないけど、もしこれが仕組まれた契約だとしたら…

全て辻褄が合う気がする。

そもそも彼は私がRoadwayにいることを知っていたのだろうか?



「一昨日の夜、このバーで偶然おまえを見つけた。そしてコンビニの前でおまえに声を掛けたときに見たんだ」

「見たって…何をですか?」

「それ」



彼が指さしたのはソファーに置いてある私の鞄だった。


落ち着いたキャメルのカラーと飽きの来ないシンプルなデザインに惹かれ夏のボーナスで購入したお気に入りのトートバッグ。

でも…一体この鞄の何を見たというのだろうか?



「それだよ、鞄に付いてるやつ」

「パスケース…?」

「その中に入館証が入ってるだろ?それを見ておまえがRoadwayで働いていることを知った。これは偶然」



…迂闊だった。

落としたり無くしたりする心配がないから軽い気持ちで鞄に元々付いていたパスケースの中に入館証を入れていたんだった。

夜だったとはいえ、話したのはコンビニの前だったから充分カードが見える明るさだったんだろう。



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