プロポーズは突然に。
彼と結婚すること以外にデメリットはない。
確かに…その通りかもしれない。
このまま行けばRoadwayは間違いなく軌道に乗るだろう。
お客様にも今まで以上に満足していただけるはず。
到底納得できるような話ではないはずなのに、彼の威圧的な雰囲気がそうさせるのか妙に納得してしまう自分がいる。
「俺がおまえに求めるのは婚姻届けを書いてもらうことと俺と一緒に暮らすこと、この二つのみだ」
「二つ…」
「あぁ。結婚しても仕事は続けて構わない。好きなこと、やりたいことは我慢せずやればいいし飲みに行きたければ行けばいい」
「…」
「お互いの生活には一切口を出さない、自分のことは自分でする。これがルールだ」
結婚は自分を犠牲にする行為に値する、そう思っていた。
他人に尽くし、自分の気持ちを抑えてやりたいことを我慢して。
他人のために毎日食事の用意をし、他人が着た洋服を洗濯して、他人が汚した部屋を片付ける。
他人のためにそんなことを死ぬまで毎日続けないといけないなんて考えただけで吐き気がする、そう思っていた。
「おまえは公の場に出る必要はない。俺は忙しくて殆ど家にはいないし寝室も別にするからあまり顔を合わせることもない。面倒なことは一切要求しないからおまえの負担は0に等しい」
でも、私と同じく結婚願望がない彼はそんな面倒なことは望んでいないらしい。