プロポーズは突然に。
『桃華、覚えておきなさい。“当たり前”の反対は“ありがとう”なんだよ』
まだ幼かった私にそう教えてくれたのは父だった。
『“ありがとう”を漢字で書くと“有難う”だろ?“有り難し”という意味だ』
『ありがたし…?』
『あることが難しく、稀であり、滅多にない事に巡り会う。それが有り難し…分かるか?難しいかな』
つまり奇跡ということなんだ、と父は嬉しそうに私に語ってくれた。
奇跡の反対が“当然”や“当たり前”になるのかもしれない。
人間は、毎日起こる出来事を当たり前だと思って過ごしているから。
でも実はそれは当たり前なんかじゃなく、奇跡の連続。
『当たり前のことにこそ感謝』
父の口癖だったけど…
“夫婦なんだから当たり前だろ?”
彼の言う“当たり前”には…感謝できそうにない。