プロポーズは突然に。
「恐らく今日はもう戻ってこない。明日の夜、迎えに行くから」
「え?いえ、そんなこと…」
「父に会うのに別々に行くのか?おかしいだろ」
「それは…そう、ですけど」
「あと、明日までに敬語と呼び方直しとくように」
「…」
「できるな?できなかったら、」
再び香るシトラスの匂い、
頬を掴むようにして私の顔を持ち上げる大きな手、
―――噛み付くように触れた…唇。
「戸締まりしっかりな」
そう言って何事も無かったかのように部屋から出て行く彼と広すぎるリビングで立ち尽くす私。
キスなんて初めてなわけでもない。
私にとってキスなんてただ唇が触れ合うだけの無意味な行為。
それなのに…
やけに感情が昂っている自分に戸惑っていた。