プロポーズは突然に。
「いってらっしゃいませ、奥様」
「ありがとうございます…いってきます」
5分後、職場のビルに着いた私は好奇の目に晒されることとなった。
この周辺はセレブで溢れているから高級車なんて珍しくはないのだけれど。
問題はその高級車から出てきたのが私のような庶民だということだ。
ブランド物の洋服で着飾っているわけでもない。
白いニットにボーダーのTシャツ、ハイウエストのデニムに立ち仕事でも疲れないローヒールパンプスという完全に仕事仕様のファッション。
髪型だって胸まで伸びたアッシュの髪を軽く巻いて一つに纏め、スカーフでヘアアレンジしているだけのラフスタイル。
そんな普通すぎる人間が高級車から降り、日下さんに頭を下げられているもんだから通り過ぎる人達は何事かと振り返るというわけ。
…明日からは絶対に歩いて行こう。