プロポーズは突然に。
いつまでも頭を下げ続ける日下さんに居た堪れなくなり、逃げるようにその場を去る。
相変わらず鞄に付いたままのパスケースに入れた入館証を入口で提示して、ため息混じりに従業員専用のエレベーターに乗り込んだ。
「桃華っ」
そんな私を追いかけるように慌ただしくエレベーターに乗り込んできたのは咲ちゃんだった。
「あ、咲ちゃん。おはよう」
咲ちゃんは挨拶を返すことも忘れ、興奮気味に詰め寄ってくる。
「ちょっとさっきの何?いつから奥様になったの!?」
「私が聞きたいよ。もう何がなんだかさっぱり状態」
「昼、一緒にランチしよ!洗いざらい聞かせてもらう!」
「何をどう話せばいいのか分からないんだけど」
「何でもいいからとにかく聞かせて!またあとでLINEするから」
エレベーターが12階に停まるなり勝手にそんな約束を取り付けて、咲ちゃんはさっさと行ってしまった。
面倒なことは避けて生きてきた私の人生に、面倒なことが次々と起こっているこの状況…
この上なく面倒くさい。