プロポーズは突然に。
「イケメンで仕事もできてお金持ち!最高じゃん。何の文句もないと思うけど。寧ろ運命?」
「運命だな。何だかんだ言ったって婚姻届にサインした時点で桃ちゃんはその人のこと受け入れたってことだし?」
「恋愛なんて面倒くさい、結婚なんてしたくない、が口癖の桃華がねぇ…強引な男には弱いんだ」
「ちっ、油断させといて抜けがけか。これだからリア充は…アラサー女子の敵め」
「いやいや…優子姉さんは美しいのにすぐ毒吐くからいつまでもリア充になれないんです」
「ブリッコが得をする腐った世の中なのが悪い」
咲ちゃんはパスタサラダを、優子さんはカツ丼を食べながら私そっちのけでそんな話をしている。
…まさか一ミリも同情、心配してもらえないなんて。
「でも大丈夫?」
「だから全然大丈夫じゃないよ」
「そうじゃなくて。ロッソ・ピウマ副社長の結婚相手が美容師って有りなの?セレブの相手はセレブが普通じゃない?」
咲ちゃんに言われてハッとした。
そう言われてみればそうだ。
彼のお父さんは資産家の娘と結婚の話を進めていたみたいだし、無名の美容師の私が相手だと知ったらきっと納得しないだろう。
そうすれば猛反対されてこの話はなかったことになるかもしれない。
…私にとって好都合だ。