プロポーズは突然に。
父親の存在、お互いの存在
険悪なムードに終止符を打つかのようなタイミングで車は目的地へ到着した。
彼のお父さんは明日から海外出張ということもあり、ゆっくり食事をする時間もないので彼の実家に挨拶へ行くことになったのだ。
「お疲れ様でした」
「ありがとうございます」
日下さんが開けてくれた後部座席から一歩外に出ると、そこは都内の閑静な高級住宅街。
豪邸が建ち並ぶ中、一際目を引く立派な門構えの洋風住宅が彼の実家らしい。
外から中の様子が見えないように高い塀が設置されているその家はまるで芸能人の家のようで…
…思いきり普段着の私は相当場違い。
私の身長の何倍もある大きな大きな外門の前で緊張してしまう私に彼はコソッと呟く。
「桃華は自然体でいればいい」
「自然体で…」