プロポーズは突然に。
「おかえりなさいませ、聡様」
門を潜り、玄関の扉を開けると使用人さんがズラリと並んでいて、彼に頭を下げる。
こんなのドラマや漫画の中でしか見たことない私は唖然とするばかりだ。
「ただいま。父さんは?」
「書斎でございます」
「そうか、ありがとう」
とても現実世界とは思えない目の前の光景に眩暈がする。
神様というのは不公平だ。
華やかすぎる世界で育った彼は何でも持っている。
地位も、名誉も、名声も、財産も………家族も。
何も持っていない私とは大違いだ。
「桃華、書斎は2階だ。行こう」
「…はい」
私はただただ彼に付いていくしかない。
きっとこの家を出る頃には晴々とした気分になっていることだろう。
バッサリ斬り捨てられて、こんな面倒な世界からさっさと抜け出すんだ。