プロポーズは突然に。





まだ全然慣れない家のソファーで項垂れたのは帰宅してすぐのこと。


そんな私の隣に座った彼は、勝ち誇ったような表情で婚姻届をピラピラと揺らしてみせる。



「あとは提出するだけだな」

「…思いきり反対されるのを期待していました」

「俺と結婚するのがそんなに嫌か?」

「嫌です」

「何で?」

「私は誰かと一緒に生活することに慣れていません。苦痛です」




結局、彼のお父さんは猛反対どころかこの結婚に大賛成。


資産家の娘との縁談は断るとまで言っていた。





一人が本当に楽。

誰にも気を遣わず、振り回されず、

自分が思うまま生活できて、

自分の好きなように時間を使うことができる。




子供の頃からそうやって自分に言い聞かせて生きてきたんだ。

今さら誰かと生活するなんて考えられない。
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