秘密の恋は1年後
同棲初日なのに、既にキスの寸前まで経験するなんて……今日はなにをして過ごす予定でいるのかな。
落ち着こうとそっと息を吸ったら、ほのかに香っていたマリン系の匂いを全身で感じてしまった。
これからの毎日、ここで生活をしていける気がしない。
今の段階では、緊張と気まずさと、彼の色気やらなんやらに耐えきれず、生きた心地は味わえないと想像できた。
ふぅっと息をついて、なんとかして鼓動を落ち着かせようとしていたら、彼がグラスを両手にやってきた。
「氷、少なめにしたけどよかった?」
「ありがとうございます」
さっき、車内のエアコンも切って窓を開けてもらったくらい、冷房は得意ではない。
そんなことから察して、氷を少なくしてくれた彼の気遣いをありがたく受け取る。
「…………」
ふたり並んでソファに座り、無言でグラスを傾けた。
彼は今なにを考えているだろう。さっきキスを拒否したことが悔やまれる。