秘密の恋は1年後
「荷物、少ないね」
「必要なものが出てきたら、自宅に取りに行けばいいとと思ったんです」
「そう」
やっと話したと思ったのに、また間が空いた。
彼が怒っているとしたら、それも不本意だと思い、思い切って彼に身体ごと向けて座り直した。
「社長、怒ってますよね? 気分を害してしまってすみません」
「えっ!? 俺が?」
余程意外だったのか、彼はきょとんとしている。
「謝るのは俺の方だよ。気を悪くさせてごめん」
私の気持ちに気づいていてくれたと知って、ほんの少し気張っていた心が緩む。
きちんと彼も私に身体を向け、まっすぐに私の目を見て謝ってくれた。
「勢いとムードに押されてあんなことを……。だけど、軽い気持ちではなくて、まひるのことが好きでたまらなくて……。いや、でも本当にごめん」
肩を落とし、しゅんとしている彼を初めて見た。
会社で見てきたのは、仕事が好きでいつも生き生きとしていて、微笑みの似合う輝いている彼だった。
最近は、意地悪な一面を覗かせたり、愛斗さんや結衣さんと過ごしているときの、弟っぽさのある彼も知ったけれど……。