秘密の恋は1年後

「キス、しませんか……?」
「しません」

 返事に似合わない微笑みを見せれば、彼女は俺をいっぱいに映す目を丸くした。


 ご機嫌伺いのキスなんて望んでいないし、欲しくもない。
 彼女が心から望んでくれたなら、嫌というほどキスの雨を降らせてやるけれど。


「行くぞ」
「っ、はい」

 ますます頬を赤らめて上目遣いで見つめられ、不覚にもドキッとした。
 同棲を持ちかけたのも猫かぶりをやめたのも全部自分だけど、まひるの自然体のかわいさには時々飲みこまれそうになる。


「本当に怒ってないですか?」
「あぁ」
「でも、急に人が変わったように……」
「化けの皮なんて、すぐ剥がれるだろ」
「化けの皮っ!?」

 ギョッとした様子の彼女を流し見る。


「嫌なら、同棲はなかったことにしてもいいけど?」

 キスに続き、また拒否されたらと思いながらも問うと、彼女は小さく首を振るだけだった。

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