秘密の恋は1年後
スーパーに着き、入口に置かれているカートを一台引いて、かごを載せた。
「社長、なにが食べたいですか?」
「まひる」
人目を憚らずそう返したら、彼女はまた動揺して周りを気にしている。
「……が作った特製のカレー」
間を置いて続けたら意地悪に気づいたようで、彼女は少し膨れつつも「わかりました」と言って、スタスタと先に行ってしまった。
からかい甲斐あるなぁ。
俺の彼女にぴったりだと思うんだけど、向こうはどう思っているのやら。
後を追って行くと、スパイスが所狭しと並ぶ陳列棚の前に彼女がいた。
「社長の好みの辛さはどれくらいですか?」
「結構辛くても平気だけど、お前が食べられるくらいでいい」
クミンシード、ターメリック、カイエンペッパー、コリアンダー、ガラムマサラ、ローリエ……。
次々とかごに入れていく彼女の手には躊躇がない。
並びに置かれたカレーフレークも入れて、次は野菜売り場へと向かうようだ。