秘密の恋は1年後

 どうやら、本当に日頃から自炊をしているようだ。
 もし彼女が俺のために料理をして待っていてくれるなら、駒沢の自宅に毎晩帰るのも悪くない。


「社長、お肉はなににします? おすすめはチキンカレーですけど」

 カートを押して歩く俺に、振り返って尋ねる彼女はとてもかわいい。
 ポニーテールを揺らして、楽しげな口調で話しているのを、いつまででも眺めていられる気がする。

 だけど、周りの主婦たちが、社長と呼ばれている俺をちらりと見遣る。

 この前、交際記念日だって設けたはずなのに、どれだけ自覚が薄いんだよ。
 日頃の癖が抜けていないだけだとしても、改善してもらう必要は大いにある。


「プライベートでは、名前で呼びなさい。周りの目もあるだろ」
「あっ、そ、そうですよね……すみません」

 だけど、彼女は一律の価格がつけられた肉のパックを見比べるばかり。

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