秘密の恋は1年後

「顔真っ赤だけど、どうかしたか?」

 そっと覗きこんだら、自然と目が合った。
 熱でもあるんじゃないかと思うほどの赤い顔に、少しだけ心配になる。


「大丈夫です! それより、お肉はどっちにします?」
「あっちの量り売りの肉にしよう」
「でも、こっちのほうがお買い得ですよ?」
「美味いほうがいい」

 彼女を置いてカートを押し、精肉店の前へ。
 国産牛の塊に食欲が刺激され、チキンカレーの予定を変更してもらおうと思っていたのに、少し遅れてやってきた彼女も「ビーフカレーにしましょう」と言ったので、俺は小さく笑った。


 ひと通りの買い物を済ませ、二袋にわけた荷物を提げて歩く。片方持つと言われたけど、女に重いものを持たせるなんて論外だ。
 自宅に戻ってキッチンカウンターに袋を置くと、まひるは自宅から持ってきたエプロンを着け、後ろ手で紐を結んだ。
 くだらない想像ばかりしてしまう俺は、彼女が毎晩エプロン姿で出迎えてくれたらと思い浮かべ、だらしなく緩みかけた口元をキュッと引き締めた。

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