秘密の恋は1年後
「今度、結衣さんにポテトサラダの作り方を教えてもらいたいなぁって思ってるんです」
「そうなの? じゃあ結衣にも話しておくし、うちにおいで」
「いいんですか!?」
仲睦まじい夫婦の時間を邪魔するようで気が引けてしまうから、レシピだけ送ってもらおうとしていたのに。
「もちろん。結衣に予定を連絡するように伝えておくね」
「ありがとうございます!」
同棲に踏み切るのはもう少し先になるかもしれないけれど、このところ忙しい彼に手料理を振る舞って、英気を養ってほしいと思っていた。
そのためには、彼の好物を並べて、たくさん食べてもらわなくちゃ。
十五分ほどで到着し、社屋近くで降ろしてもらった。さすがに誰かに見られたら面倒事が増えそうだし、相手を聞かれたところで、社長のお兄さんだなんて口が裂けても言えない。
「それじゃ、またね。仕事、頑張って」
「はい! 本当にありがとうございました!」
尚斗さんの気持ちは信じなくちゃ。私を想ってくれていることまで、否定するようでは彼女失格だ。
そっと背中を押してくれた愛斗さんの優しさに感謝しつつ、足取り軽く社に戻った。