秘密の恋は1年後
午後の業務も定時までにきっちり終わらせることができた。
研修委託先に詳細を詰めるメールを送信してから、明日以降のスケジュールをチェックする。
尚斗さんの予定も覗いてみると、今日も明日もその先も、ずっとびっしり埋まっていた。
お昼、ちゃんと食べてるかなぁ。いつも何時に帰ってるんだろう。仕事を離れてリラックスする余裕は持てているのかな。
私なんかに心配されなくとも、彼は若くして社長の座に就いた優秀な人だから、自分の体調管理やスケジュールの調整くらい、当然問題なくやっているだろう。
それに、社長秘書の沢村さんだって敏腕だから、きっと大丈夫。
そう思うけれど、彼からは音沙汰がなく、エレベーターで乗り合わせて以来、接点がない。
忙しい中でも、少しくらいは私のことを考えてくれていたりするのだろうか。
――会いたいって、思ってくれてる?
「なんか疲れてるね。早めに帰って、ゆっくりしたら?」
思わず深いため息が漏れ、向かい側に座る先輩社員に気づかれてしまった。
「そうします。お先に失礼します」
定時を少し回った頃、他の同僚も席を立ち、一緒に下りのエレベーターを待った。