秘密の恋は1年後
「アルパ、久々だな。元気か?」
出社して、秘書と朝のやり取りを終えてから少し時間が空いたので、久しぶりに社で飼われているアルパカたちに会いに来た。
特に人気のあるアルパは、うちのマスコットに就任していて大人気だ。たしかに人懐こいし動物のくせに愛想がいい。
「フーン……」
アルパカなりの相槌のようなものを返してきて、ひたすら俺に撫でられて気分がよさそうだ。
「お前さ、彼女とかいるの?」
なにを話しかけてるんだ、俺は。相手はアルパカだぞ。
柄にもないことをしている自分を俯瞰して苦笑いしていると、ふとアルパが手を離れて、背後にいるメスのアルパカに寄り添った。
どうにもその表情が自慢げに見えて、恋人の心が今ひとつ掴めずにいる俺を笑っているかのようだ。
「またな、お幸せに」
「フフーン」
機嫌のよさそうな返事を背中で聞き流しながら、社長室に戻る。
アルパに俺の気持ちが読まれているとは思わないけれど、得意げな表情が頭からしばらく離れなかった。