秘密の恋は1年後

 いろいろ考えて、【水曜の夜、なにしてる?】と打って、そのまま消した。【次の週末の予定は?】と打ったけど、それも。
 距離を取ったのは向こうなのに、なんで俺が追いかけなくちゃいけないんだ?

 そのまま携帯をスーツにしまって、搭乗時間が近付いてラウンジを後にした。


 一日目の夜は、接待で遅くまで中洲で飲んだ。
 途中でまひるからメッセージが入ったけれど、客先がいる手前だったのでさらっと読み流すに留めた。


「社長、ではまた明日よろしくお願いします」
「お疲れ様。ゆっくり休んで」

 ホテルにチェックインしたのは二十三時過ぎ。
 同行社員と別れ、ようやくひとりになった時、ふと寂しさに襲われた。

 さっきまでの賑やかさが嘘のように無くなり、しんと静まり返ったビジネスホテルの一室はとても無機質で、酔いに任せて寝入ることもできそうになく、寂しさをぶつけたくなる。

 ……まひるに会いたい。抱きしめて、思い切り愛し合いたい。

 ベッドの足元に腰かけ、スーツから携帯を取り出す。
 発信履歴から〝麻生まひる〟を選び、呼出音を左耳で聞きながら目をつぶった。

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