秘密の恋は1年後
《――もしもし》
耳通りのいい澄んだ声が聞こえた。瞬間的にドキッと胸の奥が脈打ち、下ろしていたまぶたを開ける。
「寝てたか?」
《まだ起きてました。尚斗さんは、ホテルですか?》
「うん」
一言二言話しただけなのに、数日ぶりだからか彼女のテンションが高いのが伝わってくる。
「連絡、待ってた?」
《はい! 忙しそうだったので、少し控えてたんです》
「メッセージ、送ってきてたじゃん」
《そうですけど、でも控えてたんです。本当はもっと……》
「……なに?」
言いたいことがあるなら言ってくれて構わないのに、口ごもる彼女を導いた。
彼女がなにを思っているのかを、もっと知りたいからだ。
《もっと構ってほしいです》
素直な気持ちを聞かされて、不覚にも胸の奥がキュッと苦しくなった。
酒のせいだと言い聞かせ、ゆっくり呼吸をして吐き出す。