秘密の恋は１年後

　――昨夜、尚斗さんが出張から戻ってきた。
　だけど、相変わらずメッセージに返事はないし、あれから連絡だってもらえていない。

　木曜の今日もデスクにかじりついて、メールで送られてきた研修の日程をチェックするけれど、頭の片隅には彼がいる。

　恋愛経験の浅い私にとって、尚斗さんはつかみどころがなさすぎる。

　帰ってきたよ、くらい言ってくれてもいいのになぁ。
　もしかして、連絡するのが苦手なタイプ？　……でも、福岡から電話をくれたのは彼だ。

　福岡に来るように無茶なことを言われたのも、私が寂しがっていると気づいていたからかもしれない。
　それとも、もっと構ってほしいって言ったからかなぁ。

　彼は、私の気持ちが手に取るように分かっている時もあって、それは経験の差もあると思う。
　だから、どんなに頭を捻っても、彼の心は読めるはずもないのに、考えずにいられない。

　仕事に集中しつつも、暇があれば尚斗さんのことばかり。
　でも、それも幸せだと思える。
　恋人を想う時間は、自然と心が充実していく気がした。

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