秘密の恋は1年後

「うわっ!!」
「早く行くぞ」

 会計の列に一緒に並んでいたとは知らず、真後ろにいた彼に手を引かれて書店を出た。
 二カ所ある入口のうち、ビルの裏通りに出る方へと、いつになく早足で歩く。スーツ姿の彼は当たり前だけどすごく素敵で、ほんのりと彼の匂いが香ってくる。

 後ろ手で私を引っ張る彼は手ぶらで、私の買い物に付き合ってくれただけのようだ。
 彼の大きな背中を見つめつつ、思わず笑みがこぼれてしまった。

 だけど、こんな時でさえタイミングよく、不意に私を振り返って流し見てきて。


「ニヤニヤすんな」
「はーい」

 注意されても機嫌のいい返事をすると、彼が小さく笑った気がした。
 
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