秘密の恋は1年後

 ビル横の路地に出ると、彼は私を助手席に乗せてから、パーキングメーターの精算を済ませた。
 そして、颯爽と車の前を通って運転席のドアを開け、フロントガラス越しに私の視線を簡単にひとり占めする。


「なに?」
「っ!!」

 彼が隣でシートベルトを締めるついでに顔を寄せてきて、小さく笑う。


「……は、早くしないと、誰かに見られちゃうかもしれませんよっ!?」
「そうだな」

 一転して、スッと遠退き、エンジンをかけて車を出した。


「あ、あの、今日はどうして急に」
「お前がデートしたいんじゃないかと思ったから」
「えっ!?」

 確かに、尚斗さんロスではあった。
 同棲を延期してからというもの、連絡があまりもらえていなかったし、週が明けると彼は出張に行ってしまった。
 それに、出張先からは連絡を一度くれただけで、今朝のメッセージだって一方的だったし……。

 どうして私の気持ちを知ってるんだろう。私って、そんなにわかりやすかったかな……。

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