秘密の恋は1年後
きっと、このところ出張や激務に追われ、家事ができなかったせいだろう。
私があまりにも驚いてしまったので、彼は化けの皮と言ったまでで、本来は綺麗好きだと思うし、ものすごく散らかっているという印象を受けたわけでもない。
グレーのTシャツに着替えて戻ってきた彼は、ダイニングテーブルの前に立ったままの私を一瞥し、キッチンの冷蔵庫からペットボトルの炭酸水を出した。
「お前、もうここに来ないのかと思ってた」
「そんなことはないですっ!」
そう遠くないうちに、彼と暮らせたらとは思っていた。
ただ、私が自信を持てていないせいで、どうにも踏ん切りがつかずにいるだけだ。
「俺と会わなくても、兄貴とは会うみたいだし」
「あれは、愛斗さんと偶然お会いして誘っていただいたんです」
「…………」
事実を話したまでなのに、彼は面白くなさそうに無言を返してくる。
ソファに座るその背中からは、不機嫌が伝わってくるようだ。