秘密の恋は1年後
ひと夏の恋より熱く
彼の身の回りの世話という大義名分を得た私は、駒沢の彼の自宅で過ごしはじめた。
六月になり、傘とレインブーツが活躍する季節になった。
今年は雨量が多いようで、週に何度も傘の花が街を彩り、夜景はキラキラと濡れている。
「……もう、尚斗さんは」
どうやら、彼は綺麗好きというわけではないらしい。清潔な生活はしているけれど、あるべきところに置くだけで、その先の整理整頓をしないのだ。
昨夜、日付が変わってから帰宅した彼が、洗面室に脱いだYシャツや自分の衣服を洗濯する。
リビングにあるラックには、難しそうなビジネス書が置かれたままで、彼の書斎の本棚に戻しておいた。
新聞紙は、今朝の朝刊を残して玄関のシューズクロークにある回収袋に入れ、飲み終わったビールの空き缶二本は、缶専用のごみ箱へ。
床はお掃除ロボットが定期的に掃除してくれるので、本格的な掃除は週末にまとめてやることにしている。