秘密の恋は1年後
最近のビッグニュースといえば、副社長が来期から社長職に就き、現任の井浦社長は親会社の社長として異動することだった。
人望のある副社長なら、いつかはそうなるだろうと想像していたところもある。
そして、人事部に所属していてよかったと、今日は喜びをかみしめているところだ。
「お疲れさまです。麻生さんはいらっしゃいますか?」
「はい、私です」
月曜の十一時。
人事部のドアを開けて、まさに今思い描いていた副社長が顔を覗かせた。
「わざわざありがとうございます」
「いえいえ。送ってもらったのはこれで全部だと思うんだけど、確認してもらえるかな?」
「はい」
社長就任にあたり、お送りしていた提出書類を預かる。
期の節目なので、異動する役職者にはひと足先に対応してもらっていて、順次返却を待っているところだ。一般社員にも追って対応してもらうけれど、それなりの数になるだろうから、部内で手分けすることになっている。