秘密の恋は1年後
スウェットとTシャツに着替えた彼も、リビングにやってきた。
まだ少し眠たそうに見えるのは、寝癖が完全に直ってないからだろう。アンテナのように跳ねたままの後頭部の髪に、食事を並べたついでに触れてみた。
「あれ? まだ直ってない?」
「寝起きに比べたらよくなりましたけどね」
「本当、どういう寝相だったのか自分でも謎だよ」
ふっと力の抜けた微笑みを向けられて、またしてもきゅんと胸が疼いた。
ブランチを食べ終え、ソファに座る彼にコーヒーを淹れる。
そして、ヘアブラシとミスト、ドライヤーを洗面室から持ち出し、彼の後ろで寝癖を直してあげた。
「ありがと。それも作ったのか?」
「買ってきたんです。スコーンとフィナンシェは、コーヒーにも合いますよ?」
私は紅茶にして、輸入食品店でエシレバターと一緒に買ってきたひと口サイズのそれらをつまむ。