秘密の恋は1年後
「雨、止みそうにないですね」
「そうだなぁ」
リビングの大窓から見える外の景色は打ち付ける雨粒のせいで歪んで見え、どんよりとした都会の空は重たそうだ。
長い脚を組んで読みかけのビジネス書を開いている彼の隣で、私は赤いカバーの手帳のフリーページに定規で縦横に線を引く。
早速、提案してもらった簡易な評価シートを作ってみることにしたのだ。
目標を書く欄と、尚斗さんに確認をもらう欄、達成した日付の三行でとてもシンプルだけど、ひとつずつ書き込んでいくとそれなりに見えてくる。
まずは、料理の腕を上げてレパートリーを三十まで増やす、スタイルアップといったプライベートな目標から、社員に慕われる人事になるという仕事についてのものまで掲げた。
期限は、彼の誕生日である十一月七日。無理せずマイペースで頑張れる期間だし、意識して取り組める気がしたからだ。
あとは追加していけるように空白を残し、一番上には美味しいポテトサラダを作ると書いた。
最初に彼に背中を押してもらえたら、幸先がいいし頑張れると思う。