秘密の恋は1年後
「いちいち人の顔を見るな」
「なんでですかぁ」
見るなと言われても、四六時中見つめていたいほど好きなのに。
むぅっと唇を突きだして帽子の内側でぼやくと、今度は突然帽子を取られ、眩しさに目を細めた。
「……こういう目に遭うぞ」
鼻先の距離で私に影を作った尚斗さんと見つめ合い、刹那の間を置いて唇が重なった。
今こそ帽子で隠したいのに、彼が自分の頭に乗せてしまい、両手で顔を覆う。
まさかのタイミングでキスをされて一気に鼓動が鳴り出し、横たわったままでいると、頭上に人の気配を感じた。
指の隙間から確かめたら、五歳くらいの男の子がひとりで立っている。
家族連れも多いので子供がいるのは不思議ではないけれど、親とはぐれてしまったなら問題だ。
「こんにちは」
身体を起こして、男の子に話しかけてみる。隣にいた尚斗さんも私の声で気づいたようだ。
「どうしたの?」
挨拶をしてみたけど返事はなく、ただひたすら私たちを眺めているので問いかけてみた。