秘密の恋は1年後
「……このおねえちゃんがすきなの?」
純粋な瞳で鋭い質問をしてきた男の子は、私ではなく尚斗さんに話しかけた。
「おにいちゃんチューしたでしょ? チューはすきな子にしかしちゃいけないんだよ。おにいちゃんはおねえちゃんが、すきなんだよね?」
すかさず大人の隙を突いてきた男の子に面食らう。
まさか見られていたとは思わなかったので、なかなかの気まずさだ。
だけど、子供相手に愛想のない反応はできないと思ったのか、それとも子供が好きなのか、尚斗さんはにこにこと微笑んでいて。
「そうだね。好きだよ」
「どこがすきなの?」
「えっ!?」
彼が耳を赤くしながら動揺したところで、ちょうど遠くから母親が呼び寄せてくれて、男の子は走っていってしまった。
「はぁ~……」
深く息を吐きながら帽子を顔にかぶせ、ごろんと横たわった彼を見下ろす。
隠れていない耳は日焼けしたように真っ赤で、私は口を抑えて声を押し殺して笑った。
彼のストレートな気持ちが聞けて嬉しいな。
バスケットを開け、ブランチの準備を始めると、なにごともなかったように彼も身体を起こした。